蕨知英(2019).「スピーキングタスクの定期的な実施とその評価:―実践研究二年目―」『中部地区英語教育学会紀要』48, 197-204.

実践に至るまでの経緯

実践者は、中学校教員 4 年目の時に初めて3年間英語の授業を受け持った生徒たちが卒業を控えた公開授業で、英語が話せない姿を目の当たりにしました。その時、パターンプラクティスによる指導の限界に気付き、実践研究を始めました。1年目の実践研究では、1年生のライティング指導に焦点を置き、本稿における2年目の実践研究では、1年次から持ち上がった2年生を対象にスピーキング指導に焦点を置きました。

問い

本研究の研究課題は以下の2つです。

  1. スピーキング活動にタスクの要素を組み込むことで、話すことにおける「発表」と「やり取り」の指導方法および評価方法がどのように変容したか。
  2. 指導と評価の結果、生徒のスピーキングがどのように変容したか。

参加者

公立中学校の2年生(5学級 168 名)が対象となりました。

データ収集法

週1回の頻度で授業を振り返り、ジャーナルを1年間記述しました。また、生徒全員の1-min Monologueとパフォーマンステストの発話内容を書き起こしました。

データ分析法

教師の指導の変容:ジャーナルに基づいて授業全体を振り返り、タスクに対する生徒の反応などの気付きを記述しました。
生徒のスピーキング内容の変容:データをⅠ期からⅣ期の 4 つに区切り、4 つの単元トピックを抽出して、比較することで変容を見取りました。成果物を fluency の観点から捉え、生徒を 3 つのパターンに分類し、その 3 つのパターンが顕著に表れている 3 名の生徒を抽出しました。

結果・考察

教師の指導の変容:ジャーナルの分析の結果、スピーキングタスクを通じて表出した変容は、①スピーキングの準備時間内におけるマインドマップなどの学習ストラテジーの活用、②序数詞などを用いたディスコースマーカーの表出、③文法的な誤りを恐れない未習語彙や未習文法の積極的な使用、④文として成立しない誤りから内容的な誤りへの変質、⑤fluency と accuracy を同時に評価することによって引き起こされる相反関係の5つのカテゴリーに分類されました。この分類に対応して、教師の指導の変容が振り返っています。

生徒のスピーキング内容の変容:パターン1では、収集データの語数と文数の合計が一貫して高い上位 10%の中で、Ⅰ期とⅣ期およびⅡ期とⅢ期を比較して増減の幅が少ない生徒、パターン2では、Ⅰ期とⅣ期およびⅡ期とⅢ期を比較して語数と文数が大幅に伸びた生徒、パターン3では、Ⅰ期とⅡ期の語数と文数が少なく、Ⅲ期とⅣ期とを比較して語数と文数がプラス3以上にならず、あまりfluencyが変わらなかった生徒の英文の変容が明らかになりました。

感想・コメント

実践内容の概要は図式化することで、指導の流れが読者にとって理解しやすくなっています。また、指導と評価の改善の変容についても、表と文章で要点が簡潔にまとめられています。生徒のスピーキングの変容では、3名の生徒を抽出したことで、読者は具体的な生徒の学びの軌跡をイメージしやすいでしょう。限られた紙面において、教師と生徒の変容を読者に簡潔に伝える方法という点でも参考になる事例です。

書誌情報

蕨知英(2019).「スピーキングタスクの定期的な実施とその評価:―実践研究二年目―」『中部地区英語教育学会紀要』48, 197-204. https://doi.org/10.20713/celes.48.0_197

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