髙畑伸子・清水真澄(2017).「高校 1年生を対象とした初めての英語ディベート指導実践―より効果的な指導法の気づきと生徒の変容に焦点をあてて―」『中部地区英語教育学会紀要』46, 193-200.

実践に至るまでの経緯

 実践者が勤めている高等学校は進学を志向する生徒が通っており、英語授業においては文法、読むこと、書くことを中心とした、実践者曰く「旧来の学習法」が中心となっているとのことでした。しかし、学習指導要領では、4技能の統合や論理的思考力や批判的思考力を育成することが求められています。そこで実践者たちは、そのスキルを養う授業デザインとして、ディベートを授業の中に取り入れ、実践研究を行い始めました。

問い

本研究の研究課題は以下の2つです。

  1. 教師は、生徒がより質の高いパフォーマンスを得るためにどのような指導の改善が求められるのか
  2. 生徒は、ディベートの授業を通してどのように変容するか

参加者

 高校1年生60名が参加者となりました。なお、熟達度は比較的高く、「生徒の 9 割以上が国公立大学を希望し、山梨県内で最も成績上位層の厚い高校(p. 194)」であると紹介されています。

実践期間・実践方法

 実践は 2015 年 10 月前半から 2016 年 2 月後半に行われ、2週間に1回という頻度でディベート授業が展開されました。回数は5〜7回となっています。実践者はディベート指導の経験がない中で、書籍やディベートに関するHPを見て、教材を作成しました。

データ収集法

 課題1(教師は生徒がより質の高いパフォーマンスを得るために、どのような指導の改善が求
められるのか):指導計画と教師メモの振り返りをもとに収集しました。具体的には、実践者2名とALT(Assistant Language Teacher)で振り返りを行い、ワークシートや授業での生徒の反応や様子を共有し、気づき・反省点・改善点を記録しています。

 課題2(生徒はディベートの授業を通してどのように変容するのか):実践前後の生徒の自由記述式質問紙によるアンケートにより収集しました。また、実践者はディベートの授業を通して印象的な変化や顕著な向上を見せた生徒 3 人を抽出し、具体的な記述による感想を得て、その半年後に半構造化インタビューを行いました。

データ分析法

 課題1:振り返りメモをもとにどのようにディベートの授業を行ったら良いか、その授業中の気づきからポイントを取り上げ、実践者たちが考察を加え、分析しています。
 課題2:生徒の記述をもとに、それをカテゴリーに分類し、コード化を行いました。また、抽出された3人に対する半構造化インタビューにより、ディベートの授業前後でどのような変容が分析されています。

結果・考察

 課題1:7つのポイント:(1)ディベート実戦はどのタイミングで行うべきか、(2)授業の間隔、(3)ディベート中のスクリプトの有無、(4)どの技能に重きを置くか、(5)生徒の発話の仕方、(6)論題の難易度、(7)ディベート実戦につながるモデル(インプット)が取り上げられ、それについて実践の過程、実践者の内省が描写されています。

 課題2:ディベートの授業を受ける前は、不安・難しそう・面倒といった否定的な感想が圧倒的に多かったものの、受けた後は、興味あり・英語学習に関する意欲向上が多数を占める結果となりました。また受けた後、英語力やコミュニケーションのなさに気づいた生徒もいれば、依然として難しい・面倒と感じる生徒もいることがわかりました。個別のインタビューでは、3人がそれぞれに英語ディベートの授業により動機づけられ、リスニングの力がついた、ライティングの力がついた、留学への意欲が高まったといったコメントが得られました。

感想・コメント

 ディベートは高度な言語活動であるために、実施することが困難だと思われる先生もいらっしゃるかもしれません。本論文では、「初めて」ディベート指導を行った先生による実践論文であり、その過程が丁寧に記述されています。その中で、ディベート授業を受けた生徒が変容していく様子を見て、「ディベート良いかも」と個人的には思いました。ディベート指導のポイントについては、今現在ディベートを授業に組み込まれていて、指導がうまくいかないと感じておられる先生方においても参考になるかもしれません。

書誌情報

髙畑伸子・清水真澄(2017).「高校 1年生を対象とした初めての英語ディベート指導実践―より効果的な指導法の気づきと生徒の変容に焦点をあてて―」『中部地区英語教育学会紀要』46, 193-200. https://doi.org/10.20713/celes.46.0_193

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