翠川祐輔. (2021) 「英語教師としての授業観の変容 ―自己の定期的な振り返りと同僚との協働的なリフレクションを通してー 」『令和2年度信州大学大学院教育学研究科高度教職実践専攻(教職大学院)実践研究報告書抄録集』65-65.

実践に至るまでの経緯

赴任した学校での実践に刺激を受け、子ども達が自ら表現を求め自分の思いを英語で表現する主体的な態度を育てたいと願い実践を始めることになった実践者が、中学校の英語教師が、自身が行なった英語授業の実践後に行なった定期的な同僚との協働的省察を通して、実践者自身に起きていた変容と英語教師としての授業観の変容について考察しています。

問い

本研究の研究課題は、子ども達が主体的に表現を求め、自分の思いを表現していく姿に出会うために授業実践を行い、実践後の同僚との協同的な省察を行うことを通して、どのように英語教師としての実践者自身の授業観が変容していくのか、でした。

参加者

国立大学教育学部附属中学校の中学生

データ

同僚との協働的省察を行う際の、実践者自身の振り返りの記録をもとに実践者自身による実践および実践者の気付きについて振り返りを行なっています。

結果と考察 

「健康的なお弁当のおかずのレシピを知りたいというALTのためにレシピを作成する」や「松本を訪れるALTの兄に地元の有名な食べ物や場所をまとめたパンフレットを作って教えよう」という目的のもと実践を行い、その後の省察として、子ども達の表現の正確性や命令文の学習に目がいってしまい、子ども達がなぜそのレシピを選んだのかに注目できず、生徒の思いにまで教師の意識を向けることができなかった、つまり、活動の目的を教師自身が明確に意識できていなかったことに、同僚の指摘をもとに実践者が気づいたとしています。子ども達がどうしてそれを紹介したかったのか、どんな良さを伝えたいのかなどまで尋ねることができなかったことを記録をもとに振り返っています。 

また実践が進む中で、「日本の歴史を知りたいと言うALTの兄に歴史上の人物を紹介しよう」という目的の活動を行い、その実践後に省察を行いました。この活動では、教師が生徒にWhy do you introduce this person?と尋ねることができたが、実践の振り返りでの同僚から指摘を受け、単に理由を尋ねるだけではなく、子ども達が伝えたいものの背景に感じていることを文脈とともに大切にすることが大切であること、そして、これまでの授業では子ども達の話す内容に目を向けず、英語を話していればよいという姿勢であったことに気づいたとしています。 

続く実践の中で、「松本に訪れる予定であったが来ることができなかったALTの兄に外国にいても松本を感じてもらえることを考えよう」という活動を行った中で、地元のたい焼きを伝えたい、なかでもアップルシナモン味をお薦めしたいとする生徒に対し、実践者が”I see you want ALT’s brother to eat Apple cinamon’s taihaku.”と受け止めたところ、生徒はその説明を英語で詳しく書き始めたと振り返っています。さらに、その振り返りの中で、その生徒にどうやってそのおいしさを伝えていくことができるかさらに尋ねることもできたかもしれないと振り返りを行なっています。 

同僚との省察を繰り返し、実践者自身の気付きを記録をもとに実践を振り返る中で、子ども達の思いを大切にするということは、子どもが話す表現だけでなく、表現内容の背景にある思いを教師が聴こうとする姿勢であることに気づき、その気付きことが今回の実践を通しての実践者の変容であったとしています。

感想・コメント

本論文は、実践者が日々の実践の中での悩み(puzzle)をもとに実践を行ながら実践理解を図ろうと探索的な省察を試みる探究的実践(exploratory practice)と言えます。同僚からもらった指摘やコメントも含めて、日々の実践者の気付きを記録し、定期的に振り返ることで、どのように教師の教育観が変容していったかを分析しています。教師自身の気付きを書き出してみるだけでも、実践理解や変容をもたらす起点になりうる可能性を感じ、誰もが実践できる実践研究の好例であると思いました。
https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/records/2000068#.YTAeXC36a-o

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