吉崎理香(2020).「学校英語授業における言語活動を通しての思考力・判断力・表現力の育成 ―3年生のディベート実践より―」『中部地区英語教育学会紀要』49, 267-274.

実践に至るまでの経緯 

英語ディベートは表現力を養成するだけでなく、生徒の関心・意欲の向上、協働で話し合うことやジャッジをすることで、思考力・判断力の向上に有効だと実践者は考えています。しかし、実際に英語ディベートを指導することは難しく、生徒が自分の意見を即興で述べることはできるが、いかにしてディベートの対戦相手を話を聞いた上でそれに正対する反論ができるかに実践者は課題を持っていました。

問い

  1. 相手の発話を受け、その内容に応じる形で発話することができるには、どんな力が必要か
  2. 1.に対してどのような手立てをとるのか

という2つの問いが立てられました。なお問い1.について、実践者は「①トピック内容を多角的に把握する力、②自分のもともとの意見に相手の意見を関連づける力、③つなぎ言葉を理解し、効果的に用いる力」(p. 268)が相手の発話を受け、その内容に応じる形で発話することができるのに必要な力だと考えていました。問い2.については、以下の「実践方法」に書かれている手立てを取りました。

参加者

附属中学校3年158 名を対象に実施されました。熟達度は GTEC Basic speaking test の学年平均レベルは4となっており、中学3年生としては、「十分」と実践者は分析しています。また、GTEC Basic speaking testの「自分の意見を述べる」では、特に自分の意見の理由を述べるという項目において、明確に述べることができる生徒の割合が全国平均よりも高い結果となっています。

実践期間・実践方法

3年生の12 月中旬から3月初頭まで各クラスで 10 回程度の授業で実践が行われました。内訳として50 分間の授業のうち25 分程度がディベートの時間に当てられ、ディベートの指導過程に単元7〜8 時間の後、ディベート実践本番を2〜3回実施されました。ディベートのタイプとしては、準備型ではなく即興型のディベートが選ばれました。

実践者は前述の「①トピック内容を多角的に把握する力、②自分のもともとの意見に相手の意見を関連づける力、③つなぎ言葉を理解し、効果的に用いる力」を生徒につけてもらうために以下の手立てをとりました。

①については、二者択一(例:映画を見るなら自宅が良いか映画館が良いか)のお題で、それぞれの良い点・悪い点を書かせるワークシートを用意し、ブレインストーミングをしてもらい、多角的に思考を促す指導を行いました。また、よりディベートの実践の形としては、生徒に賛成・反対の立場を決めてもらい、生徒はその立場の理由や説明を個人でメモしました。その後、クラス全体でその理由や説明を発表してもらい、その発表に対して個人で反論を作り、どんな反論が適切かクラス全体で共有しました。

②については、ディベートのジャッジの役割をクラス全員で行いました。そうすることで効果的な反論がどのようなものかを全員で考えました。ジャッジの練習を行うことで、自分の意見に相手の意見を関連づける力、ディベートに必要な思考力が育まれると実践者は考えたからです。

③については、定型表現をリスト化したものを帯活動で用い、生徒たちに練習してもらいました。

データ収集法・分析法

2月中旬(実践途中)・3月中旬(実践終了後)の2回データは取られました。質問紙でデータは4件法(4.とてもそう思う、3.そう思う、2.そう思わない、1.全然そう思わない)が用いられ、実践途中と実践終了後の平均の差を見ました。質問項目は実践者が立てた問い1.「相手の発話を受け、その内容に応じる形で発話することができるには、どんな力が必要か」と実践者が挙げた3つの仮説「①トピック内容を多角的に把握する力、②自分のもともとの意見に相手の意見を関連づける力、③つなぎ言葉を理解し、効果的に用いる力」に沿って作成されました。例えば、①に沿った質問項目であれば、「他の人の意見を聞くのは良いものだ」という質問が問われました。

結果と考察

上記の①〜③について、それぞれ生徒は必要な力だと考えていること、また、それぞれの質問項目に対して、生徒が概ね肯定的に捉えていることがわかりました。ただ、実践を通して、実践者は、「必要だと感じること」と「その力が身についたと感じること」は別の問題だとし、より生徒が力が身についたと感じるためにどのような指導が望ましいかを考察しています。

感想・コメント

英語ディベートに限らず、「話すこと」の「やりとり」の部分に課題を感じておられる先生はおられるのではないかと思います(私はその一人です)。そうした課題を克服するために、実践者の用いた「手立て」は明日の授業に役立てることもできる興味深いtipsでした。今回は質問紙での数値による分析が中心でしたが、例えばやりとりができる生徒とやりとりで困難を抱える生徒ではどういった違いがあるのでしょうか?そんなことが気になりました。

書誌情報

吉崎理香(2020).「学校英語授業における言語活動を通しての思考力・判断力・表現力の育成 ―3年生のディベート実践より―」『中部地区英語教育学会紀要』49, 267-274. https://doi.org/10.20713/celes.49.0_267

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